1月の真冬の晴れの日でした。
太陽は空の真ん中で青白い日差しを注いでいました。
土の上は音も埃も立てることなくしっとりと静かでした。
辺りでは出荷用の箱を持った農家がちらほらと見受けられる、
つまりそれはだいたい午後のはじめの頃のことで、今回の主役である大貫美智子さんがこちらに気づいてくれたところです。
彼女の両足は畝に平行で、視線はネギの方に向いて直角をなしていました。
マスクの上からそのキリっとした眼差しをのぞかせて、彼女が精悍な人物であることを改めて感じさせるのです。
「今日は何を採るんですか?」と聞くと、
「ほうれん草とネギ」と、舌を噛むように答えました。
収穫した野菜は自宅に持ち帰ります。
それからして、土曜日のベジたべーな。
売り場には美智子さんが作ったお惣菜が並びます。
畑で採ったネギはコロッケにして、
じゃがいもはポテトサラダにして、ちくわの中にいれてフライにしていました。
他にも、おいなりさん、おこわなどが並びます。
調理場でひと段落している美智子さんに声をかけます。
朝の6時から加工場で作業をしているにも関わらずとても元気です。
美智子さんが作るお惣菜を見ていると、
揚げ物というのは、食材に衣をまとわせ、彩りよく仕上がれば、見た目も快く、
手で簡単に食べられるご馳走であるということがよくわかります。
しかも、「できたてが一番おいしい」と言う美智子さんの言葉にもあるように、
揚げ物の内部で熱が回れば素材の持ち味は発揮されます。
ネギコロッケはのどの奥へと入って鼻からネギの香りが抜けて、
じゃがいもコロッケは玉ねぎの甘さが口の中で広がり、食べ応えを与えてくれます。
そして、美智子さんのこの揚げ物のトリックにかかれば、
「揚げ物はカロリーが気になる」、
といった一般論というのは味の享楽この上なき揚げ物の前では無用になります。
■美智子さん(ナッツの会)総菜販売
場所 ベジたべーな
時間 毎週土曜日 午前11時頃から
※都合によりお休みの場合があるので、事前に店舗に確認してください。